アーサー王が使ったとされる名剣エクスカリバー。
イングランドの正当な王の証となる剣です。
モデルとなった人物が持っていた剣はスクラマサクスでしょうが、15世紀末に書かれた「アーサー王の死」という物語のアーサー王が持っている剣のイメージは、多分この頃騎士達が使っていた騎士剣だと思います。
欧米でエクスカリバーのモデルが売られてるんですが、それも騎士剣ですしね。
円卓の騎士や聖杯などが出てくるよく知られる物語の「アーサー王の死」によると、幼きアーサーが選定の岩から「この剣を石から引き抜きし者、ブリテンの王たるべき者である」と伝わる剣を引き抜きます。
これはカリバーンという剣です。
そして剣は折れてしまい、湖の精から新たな剣を授かります。
こちらがエクスカリバーです。
何だ最初の王の証である剣関係ないじゃん、と思ってしまいますが、この物語は12世紀に書かれた「ブリテン王列伝」をルーツとしていて、最初に引き抜く剣の名前は元々はカリブルヌスという名前でした。
しかしその剣が折れてしまって鍛え直し、カリブルヌスに「かつての」という意味合いで「Ex」を付けて名前が変わり、Ex
Caliburnus(エクスカリブルヌス)>Ex Caliburn(エクスカリバーン)>Ex
Calibur(エクスカリバー)と、剣の伝説がイギリスとフランスを往来していく内に名前が洗練されていったようです。
それと共に話を面白くする為に湖の精から……と話も変わっていったわけです。
2つの剣は同じ剣なんですね。
それにしても引き抜いた剣が折れて鍛え直すという話……どっかで聞いたことありますね。
ブリテン王列伝はそれ以前に書かれたバルムンク(グラム)の登場するヴォルスング・サガと共通点が多く、また他にも様々な神話や伝説、サガなどが含まれていて、これ等の集大成と言えます。
フランス系からケルト・ブリテン・ドイツ……等々。
名剣というとエクスカリバーを思い起こす人も多いでしょうが、元ネタはバルムンクなんですな。
ちなみにアーサー王の死が書かれた頃は物語の好みが宮廷愛が多かったらしく、アーサー王は物語の背景という感じで、王妃グィネヴィアと騎士ランスロットのかなわぬ恋物語が多く見られます。
アーサー王という偉大な主君の嫁さんとの不倫の話です。
不謹慎な感じもしますが、いかに政略結婚しか無かったのかという時代背景が色濃く反映されてます。
政略によってやむなく結婚せざるを得なかった貴婦人達は、これを読んで素敵な騎士様に恋焦がれ、また騎士達も高貴な貴婦人に憧れを抱いたのでしょうね。
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